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水草の調子が悪い、成長が遅いときにチェックすべきポイント 

アクアリウムの楽しみ方は様々ありますが、中でも水草水槽は特に人気の高いジャンルの一つです。水草レイアウトコンテストで上位入賞している作品を見れば、誰しもが綺麗な水草水槽に憧れ、自分もやってみたいと思うはずです。しかし、実際に自分で水草水槽を作ってみると思っていたほど簡単ではなく、必ずと言っていいほど、うまくいかない、思っていたのと違う、といった状況に陥ります。

初めての作品で技術的にレイアウトがうまくできないというのは当然あるでしょうが、レイアウトの上手い下手以前に、「水草が綺麗に育たない」、「水槽がすぐコケに覆われてしまう」、「最初は調子良かったのに徐々に水草の成長が鈍くなった」など、水草を育てること自体がうまくいかないということも多いと思います。

今回は、水草の調子が悪い、うまく育てることが出来ない、と悩んでいる方がチェックすべきポイントを解説します。

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水草を導入してからの期間

まず最初に考えて欲しいのは、水槽に水草を導入してから、どれくらいの期間が経っているかということです。水槽立ち上げ初期から育ちが悪いのか、それとも、しばらく調子良く育っていたものが徐々に調子を落としたのか。これによって、チェックすべきポイントが大きく変わってきます。

水草導入直後から、調子が悪い場合

水槽を立ち上げて水草を導入した直後から新しい葉をあまり展開せず成長しない場合は、導入した水草に問題があるか、水槽の環境が水草を育てる条件からかけ離れているかのどちらかの場合が多いです。

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原因① 購入した水草の状態が悪い

植物はその場で吸収したエネルギーを即成長に使用するだけではなく、成長するためのエネルギーを一定量体内に蓄えています。状態の良い水草を水槽に導入した場合、肥料がほとんど無い環境下でも、最初の内はある程度は成長します。なので、最初から成長が悪いという場合は、水草の状態が最初から悪かった可能性も十分考えられます。

原因② 水上葉から水中葉への移行期間

多くの水草は水中だけではなく、陸上でも生きていくことが出来ます。というか、むしろ陸上で育てる方が簡単な場合がほとんどで、水中にも適応できる植物を水草として使っているといっても過言ではないと思います。ショップで売られている水草には、陸上で育てたものを水中に移行したものも多くあります。

陸上で育った植物を水中に入れた場合、陸上に適応した葉(水上葉)のままでは水中で生きていくことが出来ないため、新たに水中用の葉(水中葉)を出します。この際、水上葉は枯れ落ちてしまうため、一見調子が悪いように見えてしまいます。しかしこれは、植物が水中に適応するための変化であり、全く問題ありません。ここで慌てて植え直したり水質をいじったりすると、逆に水草に大きなダメージを与えてしまいますので、落ち着いてしばらく様子を見るようにしましょう。

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原因③ 水温が高すぎる、または低すぎる

陸上の植物でも季節によって成長速度が変わったり、置き場所を変えなければならないことがありますが、水草も植物である以上、同様に温度の影響を受けます。メダカや金魚、ヌマエビなどをメインで楽しんでいる方は、冬場もヒーターを使用していないかもしれませんが、水草水槽を同様にヒーターなしで管理すると、冬場に水草の活性が落ちます。また、夏場30℃を超えるような場合も同様に水草の成長が止まる可能性があります。

水草の活性が落ちるだけなら良いですが、濾過槽のバクテリアが一気に死滅し、水槽のバランスが崩れてコケまみれになってしまう可能性も大いにありますので、水温の管理には注意が必要です。夏場、冬場に失敗した方は、水温を注意してみてください。

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温度計の画像

原因④ 水質が合わない(pH, 硬度)

導入した水草に問題がなかった場合、次に疑うべきは水槽の環境です。まずは水質から見てみましょう。

例外はありますが、多くの水草にとって最適なpHは6前後の弱酸性になります。弱酸性が良いとされる最大の理由は、光合成の効率が最も高くなるためです。

植物が光合成をする際に二酸化炭素を使うことはよくご存じだと思いますが、水中の場合、二酸化炭素が水に溶けている必要があります。しかし、水に溶けた二酸化炭素は、その水のpHによって形を変えます。二酸化炭素が水に溶けると『炭酸』になります。炭酸は、アルカリ性寄りのpH=7.5以上の領域ではほとんどが炭酸水素イオンもしくは炭酸イオンの形で存在しています。炭酸が水素イオンを1つ、もしくは2つ放出した形です。この形だと、多くの水草は二酸化炭素を光合成に利用することが出来ません

逆に、pHが6.5以下の弱酸性になると、水素イオンを二つ持った炭酸の状態で存在する比率が半分以上になってきます。実際は炭酸は不安定なので、炭酸の状態ではなく二酸化炭素分子の状態で存在します。この状態であれば、水草は二酸化炭素を利用できるようになり、光合成を活発に行います。

つまり、pHが低くなるほど、光合成に利用できる二酸化炭素が増えるので、光合成が活発になり、水草の成長が良くなります。かといって酸性に傾きすぎると他の影響が出てきますので、pH=6前後が最適だと思います。逆にpHが高くなると光合成が出来なくなるので、水草の成長は悪くなります。

pHの説明はこちらの記事をご覧ください。

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また、もう一つの水質の指標として『硬度』があります。硬度が直接水草に影響を与えるというよりは、硬度が高いと緩衝作用によってpHが下がりにくくなるため、弱酸性を維持できないことが問題であると私は考えています。

硬度についてはこちらをご覧ください。

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以上のことから、水質が水草の好む環境からかけ離れている場合、光合成が出来ず、成長が止まってしまう可能性があります。

原因⑤ 光量が足りない

こちらは意外と多い失敗かもしれません。光合成には二酸化炭素とともに『』が必要になります。光がなければ光合成はできません。水中での光の透過率は結構低いので、水槽の上から蛍光灯やLEDで光を当てても、水槽の底に届く光はかなり減衰しています。水面に油膜など発生している場合などでは、水草まで届く光は更に少なくなります。そのため、照明には、直視できないほど強い光を用意する必要があります。我々が太陽を直視できないことを考えれば、想像できるのではないでしょうか。

最近はLED照明が進歩してますので、比較的安価に強い照明を入手することが可能です。以前、蛍光灯が主流であった頃は、60cm水槽に4~6本の蛍光灯を載せるのが一般的でした。それだけ水草には強い光が必要ということを覚えておいてください。

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原因⑥ 二酸化炭素が不足している

上の①~⑤が問題ない場合、単純に二酸化炭素が不足しているのかもしれません。二酸化炭素の強制添加はしていますか?

植物には日向を好むものから日陰でも育つものまで様々あります。観葉植物でも室内でOKなものもあれば、日光に当てた方が良いものまでありますよね?

水草も同じで、光を好むものから強い光を必要としないものまで様々です。強い光を好む水草は基本的に多くの二酸化炭素を必要とします。そのような水草を育てる場合、二酸化炭素の添加無しで育てるのはかなり難しくなります。水草を育てる際に、二酸化炭素の添加は大きな力になります。若干初期投資が必要になりますが、是非ご検討ください。添加無しとは比べ物にならないほど綺麗な水草水槽をお楽しみいただけます。

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水草導入からしばらく経って、徐々に調子を落とした場合

最初は調子良かったのに徐々に調子を落とした場合、照明や底床など、基本的な部分は問題ないはずです。時間の経過とともに変化していった部分を修正してやれば、水草の調子も戻るはずです。水槽は閉じた空間なので、時間とともに必ず環境は変化していきます。それを修正する術を身に着ければ、長期間水草を綺麗に維持できるようになります。

まず最初に、上で述べた原因③~⑥の中で、導入初期から変化しているものはないか考えてみましょう。簡単なところからいくと、夏や冬を迎え水温が変化していないか、照明の劣化で光量が落ちていないか、二酸化炭素の添加が止まってないか、などです。

これらに問題がない場合、原因④で述べた『水質』が変化していないかを確認して見ましょう。pHや硬度に加え、ろ過能力が不足していないかも同時に確認できる下記の試験紙がお勧めです。

これがあれば、水槽に試験紙を浸すだけで簡単に判断が可能です。

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原因⑦ 肥料が多すぎる もしくは足りない

水質にも問題がない場合、最後に確認すべきは『肥料』になります。肥料が足りず水草も成長が止まるというのは容易に想像できると思いますが、多すぎても水草はうまく育ちません。

植物が必要とする栄養素の中で、特に多く必要とする元素が三つあります。N(窒素)、p(リン)、K(カリウム)です。これらの栄養素はそれぞれ植物に対する効能(役割)が異なります。

  • 窒素:茎や葉の成長に必要
  • リン:花や実をつけるのに必要
  • カリウム:根の成長に必要

このように、N-P-Kはそれぞれに役割があり、植物毎に必要とする量が変わってきます。アクアリウムで使用する水草では、花を咲かせることはほぼないので、リンの必要量は少なく、窒素とカリウムが主に必要な養分となります。

一方で植物は、必要とする成分の中で一つでも不足している成分があると、他の成分がたくさん供給されていてもそれらを利用できないという性質があります(リービッヒの最小律)。そのため、水草にリンが不要と考えて全く供給しないでいると、窒素とカリウムをどれだけ供給してもそれらを吸収できず、成長できないことになります。

ちなみに、水草水槽に生体を入れており、それらに餌を与えている場合、生体の排泄物から窒素とリンが多く供給されます。一方でカリウムの供給は非常に少なくなるため、窒素とリンが過剰になり、根を張らなくても成長できる植物が大量発生します。アクアリウムの嫌われ者『コケ』です。

コケの増殖が早い水槽では、水草がコケに覆われてしまい、水草の成長が鈍くなります。そのため、コケの発生を最小限にするように水槽内の栄養バランスを整えてやる必要があります。

方法としては、カリウムを過剰気味にすることです。先に述べた通り、根を張らないコケはカリウムが過剰にあったとしても大量発生することはありません。カリウムを過剰気味にし、水草が窒素とリンをすぐ吸収できる状態にしてやることで、コケの発生を抑えることが出来ます。

また、コケには窒素が多いときに発生するものと、リンが多いときに発生するものがあります。主にガラス面などにつく緑色のコケは、窒素過多の環境で発生します。一方、黒髭やサンゴ状のコケは、リンが増えると発生します。リンと窒素、どちらが過剰になっているかは、発生するコケの種類を見て判断してください。

生体が多い水槽では、必ずと言っていいほどリンが過剰になります。そういった場合は、リン酸除去剤の使用がお勧めです。

原因⑧ 水草が弱っている

最後になりますが、上記の全てを対策しても水草の調子が戻らない場合は、水草が弱り切っていることが考えられます。原因①で書いた通り、植物は体内に一定のエネルギーを蓄えています。そのエネルギーを使い切って弱った水草を環境の良い水槽に移したとしても、すぐには成長速度は上がりません。水草が活動するエネルギーがないため、周辺に栄養素が存在していても吸収できないのです。弱った水草が再び成長し始めるには、1か月以上かかることもあり、その間はあまり栄養を吸収しないため、コケが大量発生し、結局水草がコケに覆われることになります。水槽内の全ての水草が弱っている場合は、思い切って新しい水草を追加することをお勧めします。その中に回復を促したい水草も入れておけば、徐々に調子を上げてくるはずです。

水草やアクアリウム用品の購入

水草の購入は、価格・品揃えから、下記のショップがお勧めです。私は、20年以上利用しておりますが、季節を問わず、調子が悪い水草が届いたことはありません。

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チャームさんの紹介記事はこちらにあります。参考にご覧ください。

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