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GH?KH? アクアリウムにおける『硬度』とは何か

アクアリウムでは、飼育水の水質を示す指標がたくさん出てきますが、中でも最も分かりにくい指標が『硬度』だと思います。硬度について詳しく理解できてなくても、一般的な魚であれば、問題なく飼育することが可能です。しかし、一部の水草やレッドビーといった水質の影響を受けやすい生物を飼育する際は、硬度を理解することで格段に失敗が減ります。

今回は、硬度の指標である『GH』と『KH』について触れてみたいと思います。

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そもそも『硬度』とは?

そもそも『硬度』とは何でしょうか?硬度という言葉は様々な分野で出てくるもので、物質表面の機械的な強度なども硬度と言います。一方で、アクアリウムで使うような液体における硬度というのは、水に溶けている『カルシウムイオン』と『マグネシウムイオン』の量を指します。すなわち、『硬水』というのは、カルシウムやマグネシウムがたくさん溶けている水という意味になります。

したがって、硬度を測定するということは、このカルシウムイオンやマグネシウムイオンの濃度を測定することになります。

ちなみに、『イオン』というのは、原子もしくは分子がプラスまたはマイナスの電荷を帯びている状態のことで、カルシウムイオンというのは、カルシウムがプラスの電荷を帯びて水に溶けている状態のことを指します。

では、なぜ硬度には、『総硬度(GH)』と『炭酸塩硬度(KH)』があるのでしょうか?

総硬度(GH)とは何か

『総硬度』とは、水に溶けているカルシウムイオンとマグネシウムイオンの総量のことです。一般的に硬度というと、こちらを指すことになります。

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炭酸塩硬度(KH)とは何か

では『炭酸塩硬度』とは何かというと、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムが水に溶ける(=炭酸水素イオンとカルシウムイオンなどに分かれる)ことによって発生したカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量になります。すなわち、意味合い的には、総硬度のうちの一部が炭酸塩硬度ということになります。

なぜ炭酸塩硬度だけ分けられているのか調べてませんが、私の推測としては、水中に炭酸水素イオンとカルシウムイオンが存在する状態で煮沸するなどすると、炭酸カルシウムに戻って析出するためだと思われます。すなわち、炭酸水素イオンが存在する分は、カルシウムやマグネシウムが析出して硬度が下がる可能性があるということです。

このため、炭酸塩由来の硬度を『一時硬度』、その他硫酸塩などに由来する硬度を『永久硬度』というそうです。

炭酸塩硬度の測定方法

では、炭酸塩硬度はどのように測定するのでしょうか?

硬度と呼ばれるためカルシウムとマグネシウムの濃度を測定するように思えますが、実際は対となる炭酸水素イオンの濃度を測定し、カルシウムイオンとマグネシウムイオンの量を算出します。

炭酸カルシウム ⇒ カルシウムイオン + 炭酸水素イオン

という反応をしたのであれば、炭酸水素イオンを測定すれば、カルシウムイオンの量が分かるという理屈です。

しかし、実際は炭酸水素イオンとカルシウムイオンの量は一致しません。炭酸カルシウム以外からも炭酸水素イオンが生成するためです。水槽の中では、生物の呼吸や水草の光合成、二酸化炭素の強制添加などが行われており、これによって炭酸水素イオンの量が増減します。

そのため、アクアリウムにおける炭酸塩硬度(KH)とは、あくまで炭酸水素イオンの量であり、硬度を示す指標ではないと考えるのが妥当です。上の炭酸塩硬度の説明の際、『意味合い的には』と書いたのはこのためです。アクアリウムでは、総硬度より炭酸塩硬度が高くなることがあるということです。

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GHとKHが示しているもの

ここまで書いたことををまとめると、アクアリウムにおける硬度の指標は下記のようになります。

  • GH:水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの濃度
  • KH:水中の炭酸水素イオンの濃度

したがって、水中のミネラル量を知りたい場合はGHを、炭酸水素イオンの濃度を知りたい場合はKHを測定すればよいことになります。

エビ類を飼育する場合などは、GHを測定することでカルシウムが足りているか判断することが出来ますが、餌から摂取する方が多いという意見もあるので私は参考程度にしています。

KHを測定する意味って何?

さてここで一つ疑問が浮かびます。GHの測定はミネラル分の過不足を確認するために必要として、KHは何のために測定するのか、ということです。

先に書いた通りKHは炭酸水素イオン濃度を示すものとすると、カルシウムやマグネシウムとは無関係に思えます。ではなぜKHを測定するかというと、水中の二酸化炭素溶存量を知るためpHの変化しやすさを知るためです。

溶存二酸化炭素量の推定

水に溶けた二酸化炭素はpHによってその形を変えます。水のpHが酸性の場合は二酸化炭素として存在し、中性付近では炭酸水素イオンへ、そしてアルカリ性になるにつれて炭酸イオンの割合が増えています。

このとき、二酸化炭素:炭酸水素イオン(=KH):炭酸イオンの割合はpHによって決まっているため、pHとKHが分かれば、二酸化炭素の量が分かるということになります。

二酸化炭素の量が少ないと光合成ができず、多いと生物が中毒を起こします。

pHとKHを測定することにより、水草と生物にとって最適な二酸化炭素量に調整することが出来ます。

炭酸イオンの緩衝作用

炭酸イオンのもう一つの効果として、pHの緩衝作用があります。炭酸はリン酸と同様、酸にもアルカリにもなることができるため、pHの変動を抑える効果があります。

pHの緩衝作用については過去の記事で詳しく書いてあるので、そちらをご覧ください。

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実際に硬度を測定してみよう

このように、硬度というのは必ず測らなければならないものではありませんが、測ることによって水槽の状態を詳しく知ることが出来ます。測定したことがない人で、『水草が育たない』『エビが落ちる』『コケに悩まされている』などの問題を抱えている方は、一度測定してみることをお勧めします。

測定の方法ですが、試験紙を水に浸すだけで様々の指標が簡単に測れるものが販売されていますので、これを使えば非常に簡単に測定できます。

こちらの商品では、『pH』『KH』『GH』『亜硝酸塩』『硝酸塩』『塩素』を同時に測定することが出来ます。色見本との比較は精度を心配されるかもしれませんが、硬度などはそもそも精度を求めるほどシビアに管理しなければならないものではありませんので、試験紙でも十分だと思います。

それでは、実際に使用した様子をご覧ください。

6 in 1

このように、1枚の細長い紙に6つの試験紙がついており、全てが飼育水に浸るように水槽に入れるだけで測定終了です。

6 in 1

色見本と比較してみると、全て下限値かその少し上くらいでした。問題なしですね。

このように簡単に測定できますので、是非一度お試しください。

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