水槽管理で必ず耳にする「pH」。酸性・中性・アルカリ性を示す数値であることは多くの人が知っていますが、「pH=何を表す数値なのか」「同じpHでも水によって性質が違うのはなぜか」まで理解している人は意外と少ないものです。
この記事では、pHの正体(=水素イオン濃度)から、弱酸・弱アルカリの緩衝作用、そして同じpHでも水質が変わる理由まで、アクアリウムに必要な部分だけをわかりやすく解説します。「pHが変動しやすい水」「変動しにくい水」の違いが理解できると、水換えや添加剤の扱いが格段に上手くなります。
・同じpHでも性質が異なることがある
pHとは何を示す数値なのか
pHは「水中の水素イオン(H⁺)の濃度」を表す指標です。pH=7が中性、7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性(塩基性)になります。
pHの“数字”が意味するもの
- pH=7 → 水素イオン濃度が\(1\times10^{-7}\)mol/L
- pH=6 → 水素イオン濃度が\(1\times10^{-6}\)mol/L
- pH=5 → 水素イオン濃度が \(1\times10^{-5}\)mol/L
つまり、pHが1下がると水素イオン濃度は10倍に、2下がると100倍なるということです。この仕組みを理解すると、pHが少し変わるだけで水質が大きく変化する理由がわかります。
酸・アルカリの強さと“価数”の関係
酸やアルカリ(塩基)には「強酸・弱酸」「強塩基・弱塩基」があり、これは水素イオンを放出しやすいかどうかで決まります。
強酸と弱酸の違い
酸やアルカリには強弱があります。水素イオンを放出しやすいものは強酸、放出しにくいものが弱酸です。
・弱酸(例:酢酸・炭酸・リン酸)・・・水素イオンを持っているが、すぐにすべてを放出するわけではない
価数とは?
酸が「何個の水素イオンを放出できるか」を示す数値。ただし、価数が多い=強酸ではありません。
・リン酸の価数は3だが、水素を放出しにくいため弱酸
弱酸が“いつ”水素イオンを放出するのか
強酸である塩酸や硝酸は、100%水素イオンを放出すると書きましたが、では弱酸はいつ水素イオンを放出するのでしょうか。それは、pHによって決まります。
pHが低いと弱酸は放出しない
水中に水素イオンが多い(=pHが低い)と、弱酸は水素イオンを放出しません。すなわち、pHが低いときは弱酸は酸として働かないということです。
pHが上がると放出し始める
水中の水素イオンが減る(=pHが上がる)と、弱酸は水素イオンを補うように放出します。すなわち、周囲の水素イオンが少なくなって初めて弱酸は酸として働くということです。
ちなみに水素を複数持っている酸は、一つ目を放出するpHと二つ目を放出するpHが異なります。段階的に放出するということです。
pHが変動しにくくなる“緩衝作用”とは
弱酸はpHが上昇すると水素イオンを放出すると書きました。これは水中から減少した水素イオンを補うことになります。
例えば、アルカリ性の物質を100投入し、それによって水中の水素イオンが100消費されたとしても、水中で水素を放出せずに保持していた弱酸が100の水素イオンを放出すれば、水中の水素イオンの数は変わらない(=pHは変化しない)ということです。
このような働きを『緩衝作用』と言います。
この緩衝作用は、pHが下がるときも同様に働きます。pHが下がると弱酸は放出した水素イオンを取り込みますので、増えた水素イオンを減らす働きをします。
どれくらいのpHで緩衝作用を示すかは物質によって異なりますが、アクアリウムに関係が深い炭酸やリン酸はpH=7付近でこの緩衝作用が働きます。
したがって、炭酸やリン酸が多く含まれている水では、pH=7近辺でpHが変化しにくくなります。
同じpH=7でも水質が違う理由
ここがこの記事の核心です。
水道水と飼育水がどちらもpH=7だったとしても、同じ量の酸を加えたときのpH変化は全く違います。
水道水はpHが変動しやすい
水道水は炭酸やリン酸が少なく、緩衝作用が弱い。→ 少量の酸でpHが大きく下がる。
飼育水はpHが変動しにくい
飼育水には生体の呼吸や餌の分解で炭酸・リン酸が蓄積している。→ 緩衝作用が強く、同じ量の酸を入れてもpHがほとんど変わらない。
アクアリウム管理で知っておきたいポイント
・緩衝作用の強さ(KHやリン酸量)がpHの安定性を決める
・pHだけを見ても水質の全体像はわからない
関連指標(KH)も合わせて理解しよう
pHの安定性に深く関わるのがKH(炭酸塩硬度)。KHが高いほど緩衝作用が強く、pHが変動しにくくなります。
炭酸の濃度を示す指標『KH』については、こちらの記事をご覧ください。
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