今回は、pHについて書きたいと思います。
pHという単語はほとんどの方が知っていると思いますが、その数字が何を示しているのか知っていますか?
pHは酸性やアルカリ性の強さを表す指標で、7が中性、それより小さいと酸性、大きいとアルカリ性、くらいの理解ではないでしょうか。
では、pHが同じ液体であれば、同じ性質であると思いますか?
例えば、
答えはこの記事を最後まで読んでいただけると分かります。
そもそもpHとは?
さて、pHは酸性・アルカリ性を示す数字であることは誰もが知るところですが、pH=7の”7″は何を表しているのでしょう?
答えを言うと、pHは『水素イオン濃度』を表しています。pH=7とは水素イオンの濃度が\(1\times10^{-7}\)mol/Lであるということです。pH=5であれば、\(1\times10^{-5}\)mol/Lです。
すなわちpH=7とpH=5では、水素イオン濃度が100倍違うことになります。
pHが水中の水素イオン濃度を表していることが理解できると、水に入れたときに水素イオンを放出する性質があるものが酸性物質、逆に水素イオンと結合して消費してしまうものがアルカリ性物質であることが分かります。
例えば塩酸は、塩化水素が水に溶け、水素イオンと塩素イオンに分かれたものです。水中の水素イオンが増えるので、酸性を示します。
酸の強弱と価数
酸やアルカリには強弱があります。水素イオンを放出しやすいものは強酸、放出しにくいものが弱酸です。
強酸の例としては、塩酸や硫酸、硝酸などがあります。これらの物質を水に加えると、ほぼ100%電離して水素イオンを放出します。
一方で弱酸には、酢酸や炭酸、リン酸などがあります。これらの酸は水素を持ってはいるものの、放出しにくい性質を持っています。したがって、これらの物質を水に入れたとしても、全てが水素イオンを放出することはなく、水素を保持し続けます。
ちなみに酸やアルカリには価数というものがあります。酸の価数というのは、水素イオンを放出できる数のことです。しかし、放出できる水素をたくさん持っているからといって、強酸にはなりません。
例えば、塩酸や硝酸の価数は1ですが、水素を放出しやすいので強酸です。一方でリン酸の価数は3ですが、水素を放出しにくいため弱酸になります。
弱酸はいつ水素イオンを放出するのか
強酸である塩酸や硝酸は、100%水素イオンを放出すると書きましたが、では弱酸はいつ水素イオンを放出するのでしょうか。それは、pHによって決まります。
上でも書いた通り、pHは水素イオンの濃度を表します。pHが低いということは水素イオンがたくさん存在するということです。周りに水素イオンがたくさんある状態では、弱酸は水素イオンを放出しません。しかし、pHが上昇(=水素イオンが減少)すると水素イオンを放出するようになります。
ちなみに水素を複数持っている酸は、一つ目を放出するpHと二つ目を放出するpHが異なります。段階的に放出するということです。
pHの緩衝作用
弱酸はpHが上昇すると水素イオンを放出すると書きました。これは減少した水素イオンを補うことになります。つまり、アルカリ性の物質を100投入し、それによって水中の水素イオンが100消費されたとしても、弱酸が100の水素イオンを放出すれば、水中の水素イオンの数は変わらない(=pHは変化しない)ということです。
このような働きを『緩衝作用』と言います。
この緩衝作用は、pHが下がるときも同様に働きます。pHが下がると弱酸は放出した水素イオンを取り込みますので、増えた水素イオンを減らす働きをします。
緩衝作用を示すpHは物質によって異なりますが、アクアリウムに関係が深い炭酸やリン酸はpH=7付近でこの緩衝作用が働きます。
したがって、炭酸やリン酸が多く含まれている水では、pH=7近辺でpHが変化しにくくなります。
同じpH=7でも・・・
では、この記事の最初の質問に戻りましょう。
答えはもうお分かりだと思います。
何となく理解できたでしょうか?
炭酸の濃度を示す指標『KH』については、こちらの記事をご覧ください。
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