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生物兵器を入れるだけではコケは減らない! アクアリウムのコケ対策の考え方

今回の記事は、水槽でコケに悩んでいる方必見の内容です。

本やネットで水草水槽を維持するための方法をいろいろ調べ、外部フィルターや二酸化炭素添加機器など必要な機材も揃えた上で水草水槽を始めたにもかかわらず、毎回コケに覆われて思ったような水草水槽ができていない方、いると思います。私もその一人でした。

私の場合、今更、『水草水槽の始め方』みたいな本を読んでも知らないことなどほとんどありませんし、大学で化学を専攻していたため、pHや硬度など専門的なことも理解はできています。また、アクアリウム歴は30年ほどあり、その間途切れることなくアクアリウムを続けていたため、経験もそれなりにあると思います。それでも、水草水槽を綺麗なまま長期管理できない、その理由はいったい何なのか。

今回は、知識も経験も設備も十分なのに水草水槽がどうしてもうまくいかない、その理由を考えてみたいと思います。

先に書いておきますが、水槽をキレイに維持されている方々が一般の人は知らない特別な方法を使っている、ということはありませんし、この記事を読んでも他のサイトに書かれていないような期的なコケ対策が出てくるわけではありません。

しかし、ここで紹介する考え方を理解することによって、正しいコケ対策ができるようになります。知っていることと正しく使えることは違うということを理解していただければ幸いです。

※ここでは、魚のフンや餌の与えすぎにより水が富栄養化し水槽にコケが発生することや、エビや貝などコケを食べる生物によりコケ対策ができること、コケを抑制する添加剤などがメーカーから販売されていることなど、一般的なことは理解されているものとして進めます。この時点ですでに分からないという方は、先に本や他のサイトで一般的に言われているコケが発生する理由やその対策を調べることをお勧めします。

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生物兵器を入れてもコケは減らない

いきなり極端なことを書きました。「いやいや、自分の水槽ではしっかり働いてくれてますよ!」という方、かなりいると思います。かく言う私もすべての水槽に、エビや貝、オトシンなどの生物兵器を入れています。一方で、「エビをたくさん入れたけど、コケが減らない」という方もいると思います。

ここで私が言いたかったのは、『生物兵器投入によって一時的に目に見えるコケは減っても、コケが発生する原因は減っていない。』ということです。

最も重要なのは、水槽は”閉鎖空間”であることを理解すること

コケ対策に限らず、水槽を良い状態で維持するために最も重要なのは、水槽は閉鎖空間であることを理解することです。

飼育者が足したり抜いたりしない限り、水槽内に存在する物質は増えも減りもしない

この考え方が重要です。当然、水面を介して多少の空気中の成分が溶け込んだり、逆に水中の成分が気化して抜けることはありますが、微々たるものです。水槽の状態に大きな影響を与えるものではありません。

コケの原因は、飼育者自身によって水槽内に持ち込まれ、飼育者によってのみ除去することができます。

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コケの発生原因を理解するためのケーススタディ

さて、考え方を理解するために、何も入っていない水槽に一つずつ要因を足して、水槽がどのような状態になるか考えてみましょう。

※考え方の説明なので、水面からの溶け込みやガラス成分の溶出など、細かいことは無視します。

ケース1 水槽に純粋な水のみを入れる

まず最初に、水槽に純粋な水のみを入れた状態を考えてみます。純粋といったのは、水道水には様々な成分が溶け込んでいるため、そういったものが何も含まれていない、純粋なH2Oのみが水槽内にあるものとします。

この状態で何日置いておこうが、コケは発生しません。コケの元となる胞子などが存在しないからということではなく、コケの体を構成する成分が水槽内に存在しないためです。そのため、仮に人為的にコケを水槽に入れたとしても、コケは増えません。コケが増えるためには、炭素や窒素、リンなどコケの組織を構成する成分が必要ですが、これらの成分は勝手に水槽内で生成されることはありません。

水槽内に水の元となっている水素原子と酸素原子しか存在しない以上、水素原子と酸素原子以外が必要なモノは発生しようがないのです。

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ケース2 水槽に生体を入れる

続いて、この水槽に魚などの生体を入れたとします。これは、生体の体を構成する成分が飼育者によって水槽内に持ち込まれたことを意味します

この生物が糞尿など出したり、体表から何かしらの成分が水中に溶け出すことで、この水槽に持ち込まれた窒素やリンをコケが増殖のために利用できる状態になります。(コケが増殖するためには光合成するための光が必要だったりしますが、ここでは水槽内に存在する成分のみに着目したいので、物質が化学反応するために必要なエネルギーは一旦無視します。)

ケース3 飼育生体に餌を与える

水槽で生体を飼育するとなると当然餌を与える必要があります。つまり、またしても水槽内にコケが増殖するための成分を持ち込むことになります。食べ残さないように与えても関係ありません。糞尿や体からの分泌物という形で、水槽内でコケが増殖するための成分が増えます。

コケは生体についてくるなど必ずどこかから水槽内に持ち込まれますので、この時点でコケは増殖し始めているはずです。

ケース4 コケが発生した水槽から生体を取り出し、エビなどの生物兵器を入れる

さて、魚などの生体が入っていると、餌を与えるなどコケが増殖するための成分を追加し続けることになるので、一旦取り出すことにしましょう。その代わりに、コケを食べてくれる生物兵器を投入します。餌も与えません。そうすると、この水槽からコケはなくなるのでしょうか?

答えを言うと、コケはなくなりません。なぜなら、コケが増殖するための成分を水槽から取り除いていないからです。

エビなどの生物兵器を入れると、コケを食べてくれるので、見た目上コケは減ります。しかしコケを構成していた成分は、エビの体内で糞に形を変えて排泄されます。エビが成長するために体内に取り込んだ分、若干排泄される成分量は減るでしょうが、大半は排出されます。排出された糞は再びコケの養分となりコケが増殖します。要は、コケ⇒糞⇒コケ⇒糞⇒・・・と形を変えているだけで、水槽内にあるコケの養分となる成分は減っていないので、コケは減らないのです。

更には、生物兵器にも寿命はあるため、いつか死ぬことになります。生体の体は大量の窒素やリンで構成されているため、これも当然コケの養分になります。それまで成長のために吸収し続けた栄養も全てコケの養分となるのです。結果、生物兵器として投入された生体さえも、最終的には全てコケの養分になるということです。

話は逸れますが、pH調整剤のような添加剤にも窒素やリンが含まれている場合があり、これらもコケの養分になることがあります。

コケの発生原因のまとめ

さて、ここまでを簡単にまとめると、生体投入・餌やり・コケ取り生体の投入・水質調整剤投入など全てにおいて、一時的に目に見えるコケが減ったとしても、最終的には全てコケの養分になり得ることが分かりました。

結論 水槽に成分を足している限り、水槽内のコケの養分は増え続け、コケは増える一方である

極端な言い方ではありますが、何かを水槽に入れることでコケを減らすという考え方は、理にかないません。これは、最初に述べた通り、水槽が閉鎖空間であることによります。飼育者によって水槽に入れられたものが、勝手になくなるということはないのです。そしてそれらはコケの養分になるのです。

以上のことから、コケの対策には、窒素やリンを水槽から取り出すことが重要であると分かると思います。

対策

対策0(実施が前提) 水換えをする

今更なので詳細は控えますが、最も単純で最も効果的に水槽から不要な成分を取り出す方法です。この後にいくつかのコケ対策を書きますが、他の対策をすれば水換えしなくてよいという訳ではありません。むしろ定期的な水換えは大前提となります。よほど水道水の硬度が高い地域でない限り、毎週の水換えをベースに考える方が間違いがない(いろいろなものを使って水槽のバランスをとるより楽)です。

対策1 水草を入れ、成長したものをトリミングして通り出す

さて、ようやくここからがコケの対策です。

一つ目の対策は水草を入れて、コケの養分を吸収させ、成長した分をトリミングして取り出す方法です。水草を入れるだけではなく、トリミングして取り出すまでがセットと考えることが重要です。

水草を入れたが枯れたので追加した、みたいなことがあると思いますが、これは逆効果です。水草も組織の中に窒素やリンをたくさん持っています。そして水槽内の窒素やリンを養分として吸収して成長します。その水草が枯れると、当然水草の組織内にあった窒素やリンが水中に出てくるので、それを養分にコケが増殖します。水草を元気に成長させることができないのであれば、入れない方がマシなのです。

先に、水槽に何かを入れることでコケを減らすという考え方はナンセンスだと言いましたが、トリミングにより入れた以上の水草を取り出すことで初めてコケ対策になるのです。

対策2 水草投入や水換えに追加して、生物兵器を入れる

ここでは水草とコケ取り生体を組み合わせる意味を考えてみます。先に述べた通り、生物兵器はコケを減らすものではなく、コケを糞(養分)に変える存在と考えてみましょう。

水中の養分は、水草とコケ、双方が利用できます。水草が成長すると同時にコケも増えるということです。発生したコケはエビや貝が食べて糞になりますが、それを水草とコケが養分として吸収します。つまり、コケに吸収された分を生物兵器が再び養分として再生してくれているのです。結果として、養分の大半は水草の成長に使われることとなり、成長した水草はトリミングされ、水槽という閉鎖空間から窒素やリンが取り除かれることになります。

水草がない水槽の場合、水換えに置き換えても考え方は同じです。一度コケになったものを生物兵器で糞に変えたところで水換えして水槽から排出します。生物兵器はコケの発生原因対策ではないということをよく理解し、水槽から原因を取り除くところまでセットで考えることで、コケの少ない水槽をキープすることができるようになります。

対策3 吸着剤を使用する

一昔前まではメインで考える方法ではなかったのですが、近年技術が進んだこともあり、有用な製品が多く見られるようになりました。自分も含め、アクアリウム歴が長い人ほど、(自身が使ってこなかったため)吸着剤の使用に否定的な気がしますが、吸着剤を使用することにより圧倒的に維持管理が楽になることは確かです。

例えば、海水でサンゴを育てている水槽では、硝酸とリン酸の濃度をかなりシビアにコントロールする必要がありますが、硝酸とリン酸を吸着する製品を使用することで、かなり維持が楽になります。

下記で紹介している『ドクターバイオ』は、リン酸を吸着で、硝酸を脱窒で下げる製品で、効果は当サイトで実証済みです。

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注意点として、吸着剤はその材質によって吸着する成分が違ってきます。そこで目的によって使い分けることが必要になってきます。

ここで、目的別の使い分けができる商品として、ウォーターエンジニアリングから発売されている『リバース』という製品を紹介します。

とにかく硝酸塩などの栄養分を取り除きたいとき

生体が少ない水草水槽などで硬度を下げたい(CaやMgを取り除きたい)とき

酸性(栄養)、アルカリ性(硬度)の両方の成分を取り除きたいとき(上記二つの中間)

炭酸塩硬度(KH)が高い地域にお住まいの方に

吸着剤の注意点として、成分を吸着できる量に限界がある(=定期交換が必要)ということです。有効期限3カ月となっている製品でも、吸着対象成分が大量に含まれている水槽では、ごく短期間で吸着しなくなる可能性もありますし、逆にきれいな水だと、半年経っても吸着能力が持続しているかもしれません。要は期間ではなく吸着量次第ということです。
言い換えると、短期間で吸着効果が見えなくなるような水槽は、そもそもその水槽や飼育方法に大きな問題があると考えることもできます。そういった場合は、収容生体数を減らしたり、餌の量・回数を減らすなど、一度見直してみましょう。

まとめ

今回の記事で伝えたかったことをまとめます。

  • いろいろなものを水槽に入れることは簡単だが、入れた成分は蓄積される一方で、いずれコケの養分になる
  • 水槽から不要な成分を取り除くことによって、維持管理がシンプルかつ容易になる
  • 吸着剤によって特定の成分を取り除き、水質を安定させることが可能

これまで水槽にいろいろなものを入れてばかりだった方は、一度水槽内のものを取り除くという観点で、維持管理を見直ししてみてはいかがでしょうか。

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