ガーデニングや家庭菜園を楽しんでいる人が雑草に悩まされているのと同じように、苔庭やコケリウムなど苔を中心に楽しむ世界においても、同様に悩みの種となるものが存在します。苔の世界の雑草的な存在、それが『ゼニゴケ』です。
今回はこの庭の厄介者である『ゼニゴケ』について書きたいと思います。
苔とは何か?
まず最初に『苔とは何か』ということから見ていきたいと思います。
『苔』とは、植物の分類学上では、『蘚苔類』と呼ばれるグループのことを指します。一見苔に見える種子植物や、シダに見える苔も存在し、見た目だけで苔かどうかを判別するのは困難な場合もあります。では苔とは一体どのような特徴を持つ植物なのでしょうか。
苔と他の植物で最も大きく異なる特徴と言えば、根です。一般的な植物は水分や養分を吸収するための根と、それを全身に行き渡らせるための維管束を持っています。しかし原始的な植物と言われる苔には、これらの構造がありません。苔には体を支えるための『仮根』がありますが、水や養分を吸い上げる機能はほとんどありません。苔は葉や茎の表面から直接水分を吸収します。これは、体の水分を放出しやすいということでもあり、乾燥している環境で苔をあまり見ることがないのはこのためです。例外はありますが、苔の仲間は湿度が高い場所を好むものが多く、ゼニゴケも同様にジメジメした環境で増殖しやすくなります。
ゼニゴケの写真
それでは、我が家の庭で増殖しているゼニゴケの写真を見てみましょう。
上の写真は、東側を塀、南~西側を家に囲まれ真昼間のわずかな時間しか直射日光が当たらない庭の一角です。水持ちの良い土壌ではないのでジメジメした場所という感じではないのですが、日光があまり当たらない場所ではあります。傘のように開いているのは雄株の雄器托です。
こちらは南側、非常に日当たりの良い庭にある枝垂れ梅の根元付近の写真です。日当たりの良い場所ではありますが、今年は枝垂れ梅の枝がたくさん出て葉が茂っているので、根元は一日中日陰になっています。そのため、ゼニゴケが発生したのかもしれません。こちらは雌株のようで、雌器托が見えます。
ゼニゴケの葉にはカップ状の無性芽器があり、有性生殖だけではなく無性的に個体数を増やすこともできます。
苔には除草剤が効かない?
過去の記事で、私は庭の雑草対策にグリホサート系の除草剤を使用していることを紹介しました。
庭園やガーデニング、家庭菜園などを趣味としている人はもちろんのこと、駐車場として使っている土地や通路などでも厄介な問題となるのが『雑草』。放っておくとどんどん成長して外観上良くないだけではなく、望まぬ虫なども増えてきます。[…]
このようなグリホサート系の除草剤は、ゼニゴケに対して効果がないのでしょうか?
結論から言えば、グリホサートは苔に対して効果がありません。雑草と苔がある場所でグリホサートを噴霧した場合、雑草だけ枯れて苔は残ります。全く影響がないかは分かりませんが、通常の使用量で苔が枯れてなくなるということはほぼありません。先にも書いたように、苔の構造は他の植物とは大きく異なります。そのため、他の植物に効果がある機序でも、苔に対しては効果がないということが起こり得るのかもしれません。
私の場合は苔庭を目指しているため、グリホサートが苔を枯らさないことはむしろメリットだと思っています。雑草だけを処理できるので非常に便利です。
ゼニゴケの駆除方法
ゼニゴケは厄介者扱いされているだけあって、ネットで検索すると駆除方法がたくさんヒットします。そしてその多くが、以下の三つに分類されます。
- ゼニゴケ用の除草剤を使用する
- 木酢液を使用する
- 熱湯をかける
ゼニゴケなどの苔類には、一般の植物用の除草剤が効かないことがあります。そのため、除草剤で処理する場合は、ゼニゴケ専用の除草剤を使う必要があります。しかし、ゼニゴケはあくまで苔類であり、他の雑草に比べて増殖速度が速いわけでもなければ、それほど大きく育つわけでもありません。専用の除草剤を購入するには少し二の足を踏むかもしれません。
そこで今回は、『木酢液』と『熱湯』について効果を検証してみましたので、是非ご覧ください。
ゼニゴケについてに説明は、こちらの記事をご覧ください。
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駆除方法の検証に使用したゼニゴケ
今回、木酢液と熱湯の効果を確認するにあたり、使ったのがこちらになります。
この鉢の近くでゼニゴケが殖えており、この鉢にも飛び火した形です。元々スギゴケを育てていた鉢なのでこのような状態になって少し悲しい気持ちですが、ここで試した結果が何かの役に立てばと思います。
検証① 木酢液
木酢液の検証方法ですが、市販されている木酢液を4~5倍に希釈し、スプレーボトルに入れてゼニゴケに吹きかけました。噴射量はゼニゴケが水浸しになるくらいたっぷり吹きかけたので、液体をそのままかけたのと変わりないです。通常、木酢液を植木などに吹きかける際は100倍以上に希釈すると思うので、4~5倍というのはかなり高濃度であることがお分かりいただけると思います。
さて、木酢液を吹きかけて数日後、ゼニゴケがどのようになったかご覧ください。
はい。全く変化ありません。ここまで効果がないとは思いませんでした。
私の経験ですが、過去に盆栽に虫がついたとき、木酢液で駆除を試みたことがあります。その際は今回よりかなり薄めの溶液を使用したのですが、虫の駆除だけではなく、盆栽まで枯らしたことがありました。今回使用した4~5倍希釈という濃度は、間違いなく他の植物に影響を与える代物です。この濃度でゼニゴケに効果がないということは、木酢液をゼニゴケ対策として使用することはかなり難しいと判断せざるを得ません。ここまで効果がないとは、正直驚きの結果です。
検証② 熱湯
続いて熱湯の効果を確認しました。検証には引き続き同じ鉢を使用。熱湯はケトルで沸かしたものをそのままゼニゴケにかけました。
そして翌日、鉢を確認した結果がこちらです。
この通り、ゼニゴケは全て枯れてしまいました。この結果を受けて庭で発生しているゼニゴケにも熱湯をかけてみました。
どうですか? 熱湯をかけた部分は全て綺麗に枯れています。逆に熱湯がかかっていない部分は無傷で残っています。
使う場所を選ぶかもしれませんが、すぐ横に生えている雑草を枯らしてないことから、うまく使えば、枯らしたいゼニゴケだけ処理することが可能だと思います。ただ、かけすぎは厳禁です。その下にある樹木の根にまで影響があっては困ります。幸いにも熱湯を少し欠けただけでゼニゴケは枯れてしまいます。数回に分けて、丁寧にゼニゴケを処理していけば、周囲に影響を与えずにゼニゴケだけを処理することが出来そうです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回の検証では、ゼニゴケの駆除に有効な方法は、『熱湯』です。また、木酢液にはそれほどの効果は期待できないという結果でした。
これはあくまで私が個人的に検証した結果であり、どのような場合でも同様の結果が出るわけではありません。あくまで参考としてご理解いただければと思います。