アクアリウムは、魚やエビ、水草などの水生生物を飼育しながら、水槽という小さな世界を楽しむ趣味です。一昔前までは「熱帯魚飼育」という言葉が一般的でしたが、今では淡水・海水・水草・レイアウトなど楽しみ方が多様化し、『アクアリウム』という言葉が広く使われるようになりました。ただ、いざ始めようと思ってショップへ行くと、魚の種類も器具の種類も多すぎて「何から選べばいいの?」と迷ってしまう人も多いはず。
この記事では、アクアリウムの基本的な分類と、それぞれの特徴を初心者にも分かりやすく解説します。
・目的、スタイルによって飼育する生体も変わる
アクアリウムとは?基本の考え方
アクアリウムとは、水槽の中で魚やエビ、水草などの水生生物を飼育しながら、自然の一部を切り取ったような景観を楽しむ趣味の総称です。近年は飼育だけでなく、レイアウトやインテリア性を重視する人も増え、楽しみ方が多様化しています。まずは「アクアリウム」という言葉の背景と、昔の「熱帯魚飼育」との違いを整理しておくと、全体像がつかみやすくなります。
アクアリウムという言葉の広がり
「アクアリウム」という言葉は、もともとラテン語の aqua(水) と -arium(場所) を組み合わせたもの。つまり “水のある空間” を意味します。昔は「水槽=魚を飼うもの」というイメージが強かったのですが、現在では以下のように幅広い意味で使われています。
- 魚やエビなどの生体飼育
- 水草レイアウト(水景づくり)
- 自然景観を再現するネイチャーアクアリウム
- インテリアとしての水槽演出
- 生体の繁殖を楽しむスタイル
SNSやYouTubeの普及により、美しいレイアウト水槽や海水サンゴ水槽が注目され、「アクアリウム=水槽を使った総合的な趣味」 という認識が広がりました。
昔の「熱帯魚飼育」との違い
一昔前までは、水槽で魚を飼うことを「熱帯魚飼育」と呼ぶのが一般的でした。しかし、現在のアクアリウムとはいくつかの点で違いがあります。
① 対象が広がった
熱帯魚だけでなく、
- メダカ
- 金魚
- 日本淡水魚(日淡)
- エビ類
- 水草
- サンゴ
など、淡水・海水・植物まで含めた総合ジャンルになりました。
② 飼育目的が多様化
昔は「魚を飼うこと」が中心でしたが、今は
- レイアウトを作る
- 自然景観を再現する
- インテリアとして楽しむ
- 繁殖を楽しむ
など、目的が大きく広がっています。
③ 必要な知識・技術が進化
LED照明、外部フィルター、CO₂システムなどの機材が進化し、水草育成やサンゴ飼育など、より高度なアクアリウムが一般家庭でも可能になりました。
アクアリウムの種類①:水質による分類
淡水アクアリウムの特長

淡水アクアリウムは、川や湖に生息する魚やエビ、水草を楽しむスタイルです。塩素などの処理をすれば水道水をそのまま使えるため、初期費用も維持費も安く、初心者に最もおすすめです。
• 水質管理が比較的やさしい
• 水草レイアウトも楽しめる
海水アクアリウムの特長

海水アクアリウムは、海の魚やサンゴを飼育するスタイルです。色鮮やかな魚が多く、見た目の華やかさは抜群ですが、淡水より管理が難しくなります。
• サンゴ飼育は照明や添加剤が必要
• 初期費用・維持費が高め
アクアリウムの種類②:目的による分類
魚の飼育を楽しむスタイル
アクアリウムの王道スタイル。魚の種類によって魅力が大きく異なります。一言で魚と言っても、メダカのような数cmのものから、アロワナやガーのように1m近くになるものまで様々です。
ペットショップで購入できる魚種の中で、特に人気の高いものから一部を紹介します。
金魚

金魚はホームセンターでも販売していることが多く、最も手軽に入手できる魚の一つです。金魚はフナの仲間であり、原産地は中国です。和金、琉金、ランチュウなど多くの改良品種が存在します。熱帯魚ではないためヒーター無しでも飼育できますが、水温が15℃以下になると活動が鈍くなるため、年間通して元気に泳ぐ姿を鑑賞したい場合は、ヒーターの使用をお勧めします。
メダカ
メダカは、水槽で飼育できる魚の中では最もポピュラーな魚になります。最近は品種改良が進み、赤や青、黒のメダカや、鯉のような三色のものなど様々です。日本の魚なのでヒーター無しでも飼育できることや、繁殖も容易であることから、初心者向けでありながらも愛好家が多い魚種になります。
日淡(日本淡水魚)
日淡とは、タナゴやドジョウ、ハゼなど、日本の淡水魚の総称です。熱帯魚や海水魚のような派手さはありませんが、洗練されたような渋い美しさがあります。水草水槽よりも渓流を再現したような石組みレイアウトで飼育すると、その美しさが際立ちます。
コリドラス

コリドラスは、南米に生息する小さなナマズの仲間です。体長は3~5cm、大きい品種でも10cm程度で、水槽で飼育しやすい魚です。性格が温和でどんな魚とも混泳できることや、品種のバリエーションが豊富で流通量も多いこと、価格が手頃であること、愛嬌のある外見と動きで見ていて飽きない等の理由で、非常に人気の高い魚種になります。底に沈んだ餌を食べることから『水槽の掃除屋さん』と紹介されることが多いですが、十分水槽の主役になれる魅力を持つ魚です。
ポリプテルス
ポリプテルスは古代魚と呼ばれる魚の一種で、ドジョウのような外見をした比較的大型の魚です。太古の昔から姿形をほとんど変えていない龍を想像させるその外見は、独特でとても魅力的です。小型の品種でも20cmくらい、大きいものだと1m近くになるので、大型の水槽が必要になりますが、非常に丈夫な魚なので飼育は容易です。代表品種である『エンドリケリー・エンドリケリー』は、某アイドルのプロジェクト名にもなっているので、聞いたことがある方もいるかと思います。古代魚の中では最も流通量が多く、容易に入手可能です。
アロワナ

アロワナの仲間にはいくつかありますが、高額な魚として知られるアジアアロワナが最も有名です。龍魚とも呼ばれ、優雅に泳ぐ姿やその独特の風貌から愛好家から非常に人気があります。50cm以上に成長するため飼育には大型の水槽が必要になります。
繁殖を楽しむスタイル
ペットショップなどで入手できる魚の中には、水槽内で繁殖可能なものもいます。上で紹介したメダカ、コリドラス、ポリプテルス、アロワナも、難易度はそれぞれですが水槽内で繁殖可能です。自宅の水槽で新しい命が誕生するというのは長年アクアリウムをやっていても特別なことであり、大きな喜びを感じる瞬間でもあります。
エビ類

水槽で飼育できるエビには様々な種類がいます。その中で、ミナミヌマエビやチェリーシュリンプ、ビーシュリンプなどは大卵型と呼ばれ、淡水で繁殖させることが出来ます。一方で、ヤマトヌマエビのような小卵型のエビは、卵から孵化した幼生が一度海に下り、成長した後に川に戻るという生態であるため、自宅で繁殖させるには汽水(海水と淡水の中間)で飼育する期間を設けなければならず、繁殖は非常に困難です。エビの繁殖を狙いたいのであれば、大卵型のエビを飼育しましょう。
大卵型のエビは水槽で飼育していれば、特別なことをしなくても自然に繁殖して増えていきます。ただし、産まれたばかりのエビは非常に小さく、魚の格好の餌食になります。繁殖を狙うのであれば、エビだけで飼育する、もしくは、隠れ家となる石や水草を多く入れるのが良いです。
グッピー

グッピーはミリオンフィッシュと呼ばれるほど、繁殖が容易な魚です。その理由は、グッピーの繁殖方法にあります。グッピーは卵胎生メダカ(正確にはカダヤシの仲間)の一種で、日本のメダカのように卵を産むのではなく、体内で卵を孵化させて稚魚を直接産みます。産まれた稚魚はすぐに泳いで物陰に隠れることが出来るため、外敵から襲われるリスクが低くなります。また、グッピーの稚魚は比較的早い段階で人工餌を食べることが出来るようになるため、特別な餌を準備する必要がありません。このような理由から、グッピーは最も繁殖が容易な魚の一つと言えます。
また、グッピーは他の魚とは異なり、異なる色や模様のオスとメスを掛け合わせて新しい色・模様を作り出すという楽しみ方ができます。熱帯魚飼育は『グッピーに始まりグッピーに終わる』と言われるほど、初心者から上級者まで幅広く楽しめる魚です。
エンゼルフィッシュ

エンゼルフィッシュは、グッピーやネオンテトラと並んで、熱帯魚を代表するポピュラーな魚です。この魚の特徴は、親が子育てを行うということです。卵を産み付けてから孵化し泳ぎだすまでの間、親が子供の近くに留まり、他の魚を近づけないように守ります。子供を世話する姿は非常に微笑ましいものです。
ディスカス

ディスカスは『熱帯魚の王様』とも呼ばれる、とても鮮やかで美しい魚です。エンゼルフィッシュと同様シクリッド科に属する魚で、やはり子育てをします。特徴的なのはその子育て方法で、まだ餌を食べることができない小さな稚魚は、親の体から分泌される『ディスカスミルク』と呼ばれる粘液を摂取して成長します。
他の魚と比べ飼育難度は少し高めですが、経験を積めば水槽内で十分繁殖を狙える魚です。
インテリアとして楽しむスタイル
アクアリウムは魚を飼育するだけではなく、インテリアとしての機能を十分に兼ね備えています。リビングに観葉植物を置くのと同じように、部屋や玄関に水槽を置くことで、その空間の雰囲気を一変させる力があります。
色鮮やかな魚を主役にする

『熱帯魚飼育』と聞いて一番に想像するのが、色鮮やかな小型の熱帯魚を群泳させている水槽だと思います。一部、混泳に向かない気性の荒い魚や好む水質が異なる種類が存在しますので、混泳される前に良く調べるか、店員さんに確認してから購入しましょう。
自然を切り取ったようなレイアウトを楽しむ
最近では『ネイチャーアクアリウム』と言われる、自然の風景を切り取ったかのような水槽が人気です。近年、海外では盆栽(bonsai)が非常に人気がありますが、ネイチャーアクアリウムは盆栽の水中版と言えるかもしれません。
ADAが主催する世界水草レイアウトコンテストでは、毎年、世界中から多くの作品がエントリーされており、これらの作品を見て水草水槽を始めたという方も多いのではないかと思います。
初心者が最初に選ぶべきアクアリウム
淡水アクアリウムが最適な理由
結論として、強いこだわりがなければ、淡水アクアリウムが最も始めやすいです。
• 器具が安い
• 魚の種類が豊富
• 水草レイアウトも楽しめる
最初に揃えるべき基本セット
まずは以下のセットがあれば十分です。
• フィルター
• ヒーター(熱帯魚の場合)
• 照明
• 水質調整剤
• 魚の餌
まとめ
アクアリウムには、淡水・海水、飼育・繁殖・レイアウトなど、さまざまな楽しみ方があります。まずは自分がどんなスタイルに惹かれるのかを知り、無理のない範囲で始めるのが一番です。小さな水槽からでも、アクアリウムの世界は十分に楽しめますので、気軽に始めてみませんか。