前回の記事では、コケが大量発生した状態からリセットなしで水槽を立て直したことを紹介しました。
前回の記事でも登場した我が家のリビングに設置してある水槽について、少し詳しく紹介します。この水槽は写真を見てもらえばわかるように、壁に埋め込まれたような形で設置されています。元々は固定電話などを置[…]
今回は、コケまみれになった水槽を立て直す方法についてお話します。
ここでは、水草水槽に絞って話を進めます。魚メインの、例えばベアタンクなどであれば、リセットした方が簡単で確実です。
それでは、コケが発生している原因を考え、それに対して一つずつ対処していきましょう。
リン酸濃度を下げる
コケ、特に黒髭ゴケが発生している水槽では、ほぼ間違いなくリン酸が蓄積しています。このリン酸の濃度を下げないことには、いくら水槽を掃除したり水草を追加しても、すぐにコケに覆われてしまいます。まずは、リン酸濃度を下げることを最優先に考えましょう。
リン酸濃度を下げるには、二つの方法があります。
大量、もしくは頻繁に水換えをする
換水を行えば、確実にリン酸の濃度を下げることが出来ます。
魚の餌によって供給さえるリン酸や窒素(硝酸)を水換えによってしっかり排出できていれば、立ち上げ後しばらくは、それほどコケに悩まされることはないと思います。しかし、水換えは万能ではありません。
地域差はありますが、日本の水道水は、pHが7より高い弱アルカリ性であることが多いので、水道水で水換えを続けていると水槽の水が徐々にアルカリ性に傾く可能性があります。
pHが高くなると、水中の二酸化炭素はガスの状態から、炭酸水素イオンに変化します。これによって水草が光合成に利用する二酸化炭素が減少して水草は元気を失い、コケに覆われます。水草が吸収できなかった養分はコケにまわり、ますますコケが勢いを増すことになります。
いくら水換えでリン酸を排出しても、水草が元気を失ってしまえばどうしようもありません。
リン酸がpHに及ぼす影響については、以下の記事をご覧ください。
[mathjax]今回のテーマは『リン酸』です。アクアリウムをやっていると、様々な場面で『リン酸』という言葉が出てきます。リン酸にはそれだけ多くの働きがあるということです。ここでは、水槽内にリン酸が存在す[…]
リン酸除去を使用する
水換え以外にも水槽のリン酸濃度を下げる方法があります。『リン酸除去剤』の使用です。
リン酸除去剤を使えば、pHを上げることなく、リン酸濃度を下げることが出来ます。
頻繁に水換えをしているのにコケが発生する、水草の活性が上がらないという人は是非使ってみてください。私は、水換えをほとんどせず、このリン酸除去剤を使用しています。
水草を追加する
リン酸の次に問題になりやすいのが『硝酸』です。ここでは、魚などの排泄物から発生して、アンモニア-亜硝酸-硝酸と変化する一連の成分を『硝酸』と呼ぶことにします。
硝酸もリン酸同様、水槽内に蓄積されやすい物質です。硝酸濃度が上がると、緑色のコケが増えてきます。
硝酸も水換えで排出するのが基本です。基本ですが、水草にもできる限り頑張ってもらいます。
もともと綺麗な水草水槽がコケに覆われてしまった場合、コケがなくなればまた水草が元気になるのではないかと期待し、新たに水草を追加しない人が多くいます。
しかし、その期待は捨てましょう。水草が元気を取り戻すより、コケの増殖の方が圧倒的に早いです。
まずは、元気な水草を追加し、その水草にできる限り硝酸を吸収してもらいます。
水草は、ロゼット型ではなく、有茎草を選びましょう。有茎草は比較的成長が早く、水からの養分の吸収量も多いです。ロゼット型は根からの吸収が多いので、コケ対策になりません。
あと、水草は数種類入れるようにしましょう。水草は種類によって好む条件が微妙に違います。複数の種類いれておくと、一つや二つ調子の上がらない水草があっても、他の水草が調子が良ければカバーできます。しかし、一種類しかない場合、その水草が調子を崩すと、全体のバランスが崩れます。
カリウムを添加する
硝酸やリン酸を水草に吸収してもらうためには、肥料としてカリウムを添加してやらなければなりません。硝酸がたくさんあってもカリウムが無ければ、水草は硝酸を吸収できないのです。
カリウムの肥料として最も有名なのは、ADAのブライティです。が、私は購入したことがありません。
液肥としてカリウムを追加するのであれば、自作でも十分です。私は炭酸カリウムを水に溶かして使っています。
pHを酸性にする
肥料のバランスを整えたら、次は飼育水のpHをpH=6.5以下の弱酸性にします。理由は、pHが6.5以下だと二酸化炭素がガスの状態で水中に存在できるため、水草の光合成が活発になるからです。
光合成が活発に行われると、養分の吸収量も増えます。その結果、コケまで養分が届かず、コケの増殖を抑えることが出来ます。
ちなみに、上で紹介した炭酸カリウムの水溶液はアルカリ性になります。単体で使用していると飼育水がアルカリ性に傾いてしまうので、中和するための酸を用意しましょう。
私は、100円ショップで入手できる『クエン酸』を使っています。クエン酸でなくても大丈夫です。『木酢液』でも良いですし、『塩酸』などが入手できるのであれば、それが最も効果的です。
炭酸カリウムを添加するときや、水草に気泡がついていない場合などに添加しましょう。
また、飼育水のpHを測定したい場合はpHメーターかpH試験紙を使うと良いと思います。pHメーターは安すぎるものは避けましょう。試験紙は、pH=1~14のものより5.5~9.0のようなレンジが狭いものの方が小さな変化が分かるのでお勧めです。
二酸化炭素を添加する
pHが弱酸性になったら二酸化炭素を添加しましょう。植物にとっての二酸化炭素は、人間にとっての炭水化物のようなものです。主食がなければ活動できません。ただ。pHが7を超える状態で二酸化炭素を添加しても、わずかな量しか光合成には利用できません。必ず、pHを下げる対策を合わせて行うようにしましょう。
光合成に必要な光を照射する
ここまでのことをしっかりできていれば、水質はばっちりです。あとは、光合成のための光を照射してやれば、水草は光合成を活発に行い、成長するために水中の養分を大量消費します。養分が消費されて飼育水が貧栄養化されれば、コケの発生も抑制できます。ガラス面に多少コケが発生する状況でも、水草が元気であれば、水草がコケに覆われることはありません。
光合成には強い光が必要になります。ですが、日光はNGです。日光はエネルギーが強すぎて、コケやアオコが大量発生してしまいます。
照明にはLEDライトがお勧めです。しかし、LEDライトは値段に幅があり、当たり外れがあります。安物を購入して後悔することも多い商品になります。価格と明るさのバランスが良いものを選びましょう。
ちなみに私が使用しているものはこちらです。
あとは水草にスイッチが入るのを待つのみ
ここまですれば、環境は十分です。あとは、水草が元気に成長するのを待ちましょう。
ただ、水草の状態によっては、成長のスイッチが入るまで時間がかかる場合があります。水質に注意しながら、一か月ほどは様子を見ましょう。