サンゴが育つ光と綺麗に発色する光の違い

今回は、サンゴを育成するのに必要な光について、簡単に分かりやすく説明したいと思います。

サンゴには『褐虫藻』と『蛍光タンパク』が深く関わっており、この二つを理解することがサンゴの育成と発色の大きな助けとなります。逆に言えば、これらを理解できていなければ、いつまでたってもサンゴをうまく育てることは出来ません。

この記事は、『1.023world – ヤドカリパークとマリンアクアリウム -』様の情報を参考・引用させていただいております。

1.023world

海洋の仕組み・細菌や微生物から学ぶマリンアクアリウム!…

上記のサイトでは、サンゴについてかなり詳しく説明されていますが、初心者が見るには難しすぎる、また、情報量が多すぎるのでかなり読み込む必要があります。そこで、ここでは上記サイトの内容を掻い摘んで簡単に説明したいと思います。

また、必要な光を『波長』で表現しますが、光の波長と人間の目で認識している色がどのような関係にあるか知っておくと、より理解が深まると思います。

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サンゴを育てるのに必要な光

ご存知の通り、サンゴは褐虫藻と共生しており、サンゴが成長するために必要な栄養の多くを褐虫藻の光合成から得ています。そのため、どれだけ多くエサを与えミネラルを添加しても、最も重要である褐虫藻が光合成できる環境が整っていなければ、サンゴは思ったように育ってくれません。

では、褐虫藻が光合成に使用できる光とはどういったものでしょうか?

上記は、褐虫藻が光合成に使用できる光の波長になります。(『1.023world – ヤドカリパークとマリンアクアリウム -』様より引用)

見てわかる通り、褐虫藻は可視光線のうち、ごく一部の波長の光のみを光合成に使用しています。したがって、サンゴを育てるには、この特定の波長の光を十分に供給できるような照明を準備する必要があります。すなわち、450~480nm近辺の青色光670nm近辺の赤色光です。

このうち、670nmの光は、450~480nm近辺の青色の光を照射することにより褐虫藻が持つペリジニンの蛍光により補完されるため、無理に照明で供給する必要はありません。(蛍光については後程解説します)

結論、褐虫藻の光合成に必要な光は450~480nm近辺の青色光のみであり、これは青色LEDの波長と一致するため、極論、青色LEDの光が十分照射出来ていれば、多くのサンゴを育成することが可能になります。

各メーカーから販売されている海水魚用ライトのスペクトルを見てみると、そのほとんどで450~480nm近辺の青色光が最も強くなっていると思いますが、その理由がこれです。

サンゴを綺麗に発色させるのに必要な光

上でサンゴを育成するために必要な光について書きましたが、褐虫藻の光合成を活性化させることと、サンゴを綺麗に発色させることは違います

褐虫藻はその名前の通り褐色をしており、褐虫藻が増えるほどサンゴの色は褐色に近くなります。サンゴから褐虫藻が抜けるといずれサンゴは死んでしまうのですが、極端な話、褐虫藻が抜けてサンゴが死ぬまでの期間は褐虫藻の褐色がなくなるため、サンゴが最も綺麗に発色するそうです。サンゴを育てるには褐虫藻が必須なので、褐虫藻を減らしてサンゴの発色を良くするという方法は現実的ではありません。ただ、褐虫藻を育てることと、サンゴの発色を良くすることがイコールではないということはお判りいただけたかと思います。

では、サンゴはなぜ綺麗に発色するのでしょうか。それはサンゴが蛍光タンパクによって自ら発光しているためです。

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蛍光とはなにか

まず最初に『蛍光』とは何かを知る必要があります。『蛍光』という言葉は日常でもたまに使用されますが、その意味を理解している人は少ないと思います。

蛍光を簡単に説明すると、一定の波長の光を吸収し、別の波長の光を発光することです。詳しく説明しようとすると、基底状態・励起・電子スピンなど科学的な専門用語が飛び交う内容となり、サンゴから離れていくので、ここでは割愛します。

要は下記のようなイメージです。

  • 通常の物質:青い光を照射すると、青い光をそのまま反射し、青く見える
  • 蛍光物質 :青い光を照射すると、青い光を吸収し、緑の光を発光する

もちろん、蛍光物質によって、吸収・発光する波長はさまざまですが、サンゴは照射した光とは別の色の光を自ら発光することで、綺麗に見えるのです。

サンゴが持つ蛍光タンパクの種類

それでは、サンゴがどの波長の光を吸収して蛍光発光しているのか、具体的に見てみましょう。

上記は、サンゴが持つ蛍光タンパクとそれらが吸収する光の波長になります。(『1.023world – ヤドカリパークとマリンアクアリウム -』様より引用)

ここで注目して欲しいのが、先ほど褐虫藻の光合成に必要と説明した450~480nm近辺の青色光です。上の図を見てもらうと、この青色の光はサンゴの蛍光発色にはあまり使用されていないことが分かると思います。すなわち、褐虫藻が光合成に使用する波長とサンゴが蛍光発色する波長は異なるということです。

特に、図中の『BFP』『CFP』、更には『VFP』と呼ばれるもっと短波長で発光する蛍光タンパクに必要な430nm以下の光は、通常のLED照明にはほとんど含まれておらず、サンゴ用の特別なライトを使用しなければ、これらの蛍光タンパクを持つサンゴを綺麗に発色させることは出来ません。

ちなみに、アクアリウムでは定番のLED照明、『アクロ TRIANGLE LED』の海水用ライトのスペクトルは以下の通りです。光合成に必要な青色光は多く含まれていますが、蛍光タンパクに必要な400nm近辺の波長はほとんど含まれていません。

 

サンゴを綺麗に発色させるには、400nm近辺の波長を含む、いわゆる『フルスペクトルライト』が必要です。最近、フルカラーLEDとしてRGBライトが多く発売されていますが、これは、赤・緑・青の組み合わせで様々な色を再現しているだけで、400nmの波長を出しているわけではありません。フルスペクトルライトとは全く別物ですので、間違えないように気を付けてください。

人間の目がどのように色を認識しているかは、下記の記事を参照ください。

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